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2014-07-06 [大倉崇裕]

大倉崇裕さんの「福家警部補の再訪」読了。
小柄で地味な外見ながら、容疑者を執拗に追い詰める福家警部補シリーズの2冊目。今回は4編が収録されている。倒叙形式で書かれているために、どうしても犯人側に感情移入してしまう。今作は、少々福家警部補のチートぶりが目立ったために余計にそう思うのかもしれない。
「マックス号事件」しがない探偵から警備会社の社長に上り詰めた男の犯罪。偶然、拳銃所持犯が船に乗り込んでいた為に、福家警部補が捜査を行う。しかし、福家が乗り込んでいた理由が捜索に夢中になっていて降り損なったというのはどうだろうか。
「失われた灯」売れっ子脚本家が自らの誘拐事件を企てて殺人を犯す。福家のしつこさが際立つ。パソコンのバッテリーなどわずかな手がかりから犯人をじわじわ追い詰める。この話が一番面白かった。
「相棒」落ち目になった漫才師がコンビを解消してやり直そうとして、相方に手をかけてしまう。漫才のコンビなら相方と呼ぶ方がしっくりくるが、タイトルにするなら相棒の方が良いかもしれない。この話は犯行方法や福家の追及よりも、被害者がコンビ解消を拒んだ理由が切ない。故に、真相を知った犯人が痛々しい。大事な物証については、警察の捜査があまりに杜撰で興醒めしてしまった。また、福家のマニアックぶりが凄すぎて人間離れし始めてしまい、彼女の魅力を削ってしまい残念。
「プロジェクトブルー」フィギュア業界に絡む話。犯人は結局フィギュアへの愛情から崩れてゆくので、ドラマ版の凶器に対する違和感が、原作で解消された。ここでも福家のマニアックぶりが目立つ。あまりの無敵ぶりに言葉もない。
全作品通じて、福家の超人ぶりと偶然の幸運続きに少し興醒めする。これ以上彼女の超人化が進むのは困る。

福家警部補の再訪 (創元推理文庫)

福家警部補の再訪 (創元推理文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2013/07/20
  • メディア: 文庫





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2014-06-01 [大倉崇裕]

 大倉崇裕さんの「福家警部補の挨拶」読了。
 小柄で童顔、警察官には見えない福家警部補が犯人を追いつめる短編集。犯人の視点から始まる「倒叙形式」のミステリで、本書には4編が収録されている。
 稀覯本を愛し、私設図書館の館長をしている天宮祥子はが図書館売却を目論む社長子息を殺害する「最後の一冊」。復顔の名手で科警研退職後に大学講師に転身した柳田が、己の地位と名誉を守る為に殺人を犯す「オッカムの剃刀」。長年のライバル女優を葬った「愛憎のシナリオ」。良い酒を造り護ろうとするあまりに殺人に手を染めた「月の雫」。
 あくまでも主人公は犯人であり、福家警部補は淡々と犯人を追いつめる記号のような存在である。その為か、福家警部補のキャラは詳細には語られない。小柄で童顔なこと、警察バッジをいつも探していることが共通で、物語によって酒に強かったりマニアックなドラマや映画に強かったりと別人のように変化する。読者も自然と犯人側に感情移入してしまい、些細なミスから福家警部補に追いつめられると犯人を庇いたくもなる。ただ、ところどころ福家警部補が強引で、犯人が自供を覆したらどうなるのだろうと思う事もある。
 「オッカムの剃刀」は最後が良かったと同時に福家警部補という人物に空恐ろしさも感じる。ドラマ版ではこの部分がなく、物語の魅力が半減してしまって残念だった。
 ドラマ版では福家警部補と石松警部補の対立が物語の柱のようになっていたが、本書ではそのような描写はまったくなく、石松警部補自身に出番が殆どない。が、どうやら情に厚い人物のようである。

福家警部補の挨拶 (創元推理文庫)

福家警部補の挨拶 (創元推理文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2008/12
  • メディア: 文庫



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