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2014-10-26 [初野 晴]

 初野晴さんの「空想オルガン」を読了。
 ー廃部寸前の吹奏楽部を立て直し、吹奏楽の甲子園と呼ばれる普門館出場を目指すチカとハルタ。いよいよコンクールに出場する。だが、そんな大事な時期にハルタの様子がおかしい。なんとハルタが暮らすアパートが取り壊され、彼は住居を失っていたのだ。顧問の草壁先生に対する恋のライバルでもあるチカは、数日なら泊めてもいいという草壁の言葉に猛反発して新居を探し始めるが……。ー
 ハルチカシリーズ3作目。吹奏楽部のメンバーもなんとか揃い、元々実力者が多かった所為か(チカを除く)、するすると地区大会を突破する。私自身、中学生時代に吹奏楽部だったので、コンクールがある夏休みのキツさはよく覚えている。本番前に体育館で練習する時には楽器の他に椅子も運び、譜面台も運び、運動部並みのキツさだった。コンクール当日も楽器搬入での時間との闘いや緊張感などを思い出して懐かしく思えた。残念だったのは肝心の演奏部分の描写がまったくなかったことか。
 今作はハルタの新居探しである「ヴァナキュラー・モダニズム」がミステリとして一番面白かった。アパートの名前の由来から幽霊話、相続税ときて究極の建物。まさにあっと驚く展開だった。ハルタはそこに住んだのだろうか。楽器の練習ができる防音完備というのは羨ましい。
 「十の秘密」は痛々しいながらも甘酸っぱい青春小説。「ギャルバン」と呼ばれる清新女子高吹奏楽部が登場。全員がギャル風メイクで近寄り難い。だが、彼女達の結束はとても強い。果たしてあそこまで1人の為に尽くすことができるのか。きっと卒業しても彼女達の友情は一生続くのだろう。しかし、遠野さんの才能は凄い。
 表題作の「空想オルガン」では、チカ達に絡んでいた渡邉が登場。彼の生業に驚いた。芹澤さんもようやく「年老いた馬」の呪いから解放されたようでもある。オルガンという言葉のもう1つの意味を初めて知った。このシリーズは学生達だけで物語が収束するのではなく、外の世界の大人達が絡んでくるため、世界が広がって面白いなと思う。

空想オルガン (角川文庫)

空想オルガン (角川文庫)

  • 作者: 初野 晴
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2012/07/25
  • メディア: 文庫



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