2012-06-10 [米澤穂信]
米澤穂信さんの「追想五断章」を読みました。
ー家の都合で大学を休学し、古書店を営む伯父に居候する菅生芳光は、店を訪れた北里可南子という女性から、死んだ父親が書いた5つの小説を探して欲しいと依頼される。1本10万円という報酬につられて引き受ける芳光。素人作家であった可南子の父は叶黒白という名で様々な場所に原稿を送っていたという。5本の小説に共通するのは、そのすべてが結末のない「リドルストーリー」であること。物語の最後の一行は遺品として可南子の手元に残されていた。調査を進めた芳光は、叶黒白が20年前以上に起こった「アントワープの銃声」の容疑者だったことを知る。ー
古書店という様々な本が集まる場所に依頼された5つの小説探し。主人公である芳光は、家業が傾き父を失い、金銭的な問題で大学にも行けずというまさに袋小路状態。かといって伯父の古書店を熱心に手伝うわけでもなく毎日を過ごしています。そこに舞い込んだ依頼。依頼人である可南子は病死した父の作品とはいえ50万円と必要経費を払える余裕があり、芳光との対比がなかなかキツいものがあります。まあ。可南子は社会人なんですけど。1本探せば10万円という報酬に目が眩んで引き受けますが、自費出版されたわけでもない同人誌などに寄稿された小説を探すのはなかなか至難の業です。可南子が知っているのも1本だけ。後は故人の交友関係を辿って探して行きます。そこで出会った人達の故人に対する態度や見え隠れする「アントワープの銃声」事件の存在。芳光は次第に故人の人生そのものに興味を覚えて行きます。叶黒白の短編小説がなかなか面白い。可南子が持っている最後の一行を足して読むことになりますが、やがてこの最後の一行が持つ意味が変わってくるところがぐっと来ました。最後まで読んでから冒頭を読み直すと、「すべてはあの雪の中に眠っていて、真実は永遠に凍りついている」という一行がとても重い。秘密は秘密の方が良い。すべてが明らかになっても芳光の人生が変わるわけではありません。しかし、このことが切欠で芳光はきっと前に進むだろうと思わせる結末でした。
ー家の都合で大学を休学し、古書店を営む伯父に居候する菅生芳光は、店を訪れた北里可南子という女性から、死んだ父親が書いた5つの小説を探して欲しいと依頼される。1本10万円という報酬につられて引き受ける芳光。素人作家であった可南子の父は叶黒白という名で様々な場所に原稿を送っていたという。5本の小説に共通するのは、そのすべてが結末のない「リドルストーリー」であること。物語の最後の一行は遺品として可南子の手元に残されていた。調査を進めた芳光は、叶黒白が20年前以上に起こった「アントワープの銃声」の容疑者だったことを知る。ー
古書店という様々な本が集まる場所に依頼された5つの小説探し。主人公である芳光は、家業が傾き父を失い、金銭的な問題で大学にも行けずというまさに袋小路状態。かといって伯父の古書店を熱心に手伝うわけでもなく毎日を過ごしています。そこに舞い込んだ依頼。依頼人である可南子は病死した父の作品とはいえ50万円と必要経費を払える余裕があり、芳光との対比がなかなかキツいものがあります。まあ。可南子は社会人なんですけど。1本探せば10万円という報酬に目が眩んで引き受けますが、自費出版されたわけでもない同人誌などに寄稿された小説を探すのはなかなか至難の業です。可南子が知っているのも1本だけ。後は故人の交友関係を辿って探して行きます。そこで出会った人達の故人に対する態度や見え隠れする「アントワープの銃声」事件の存在。芳光は次第に故人の人生そのものに興味を覚えて行きます。叶黒白の短編小説がなかなか面白い。可南子が持っている最後の一行を足して読むことになりますが、やがてこの最後の一行が持つ意味が変わってくるところがぐっと来ました。最後まで読んでから冒頭を読み直すと、「すべてはあの雪の中に眠っていて、真実は永遠に凍りついている」という一行がとても重い。秘密は秘密の方が良い。すべてが明らかになっても芳光の人生が変わるわけではありません。しかし、このことが切欠で芳光はきっと前に進むだろうと思わせる結末でした。
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