SSブログ

2012-05-27 [三津田信三]

 三津田信三さんの「幽女の如き怨むもの」を読みました。
 ーとある地方にある遊郭「金瓶梅楼」に桜子という少女が売られて来る。『緋桜』という名を与えられ、花魁となるべく教育される桜子。遊女という存在を知らずただ家族の為にと遊郭にやって来た桜子は、3年後に花魁として見世に出ることとなった。そして知る遊女という仕事、知らぬ間に増えて行く己の借金、闇のうちに行われる堕胎。ある日、見世一番の売れっ子花魁が特別室から身投げする。将来を約束した男が結婚したことを知って身を投げたのだ。だが、何者かに誘われるかのように桜子もまた同じ場所から身を投げようとする。不可解な遊女達の連続身投げと噂されるこの世ならざる者「幽女」の存在。そして時は移り、戦中に「梅遊記楼」と名を変えた遊郭に再び『緋桜』という遊女が誕生した時、再び不可思議な遊女の身投げ事件が発生するー
 刀城言耶シリーズの最新作です。今回は戦前、戦中、戦後という3つの時代の遊郭が舞台です。3つの時代、3つの名を持つ遊郭、そして3人の『緋桜』という名の遊女。この条件が揃った時に起こる遊女の連続身投げ事件の謎に言耶が挑みます。第一部は何も知らずに売られて来た桜子が残した日記、第二部は「梅遊記楼」の女将に言耶が行ったインタビューの記録、第三部は戦後「梅園楼」と名を変えた店に関わった作家の雑誌連載小説、そして第四部が言耶の事件に対する解説という構成です。第一部の桜子が日記に記した「遊女」の過酷さが凄まじい。何も知らずにただ家族の為にと売られて来た桜子は、最初、花魁は綺麗に着飾って美味しい物を食べて踊って客を楽しませてるとても楽しい仕事と認識しています。しかし、遊女となって知る絶望。一度娘を売ってしまえば親はどんどん借金を重ねて行く。弟の進学、妹の結婚の為に自分は身体を売るという現実。遊女はただの担保物件となり果て、故郷に帰ることもできない。どんなに時代が変わってもなくなることのない世界。遊女達の絶望の深さがひしひしと伝わってくるので、連続身投げ事件もなんとなく説明がついて納得しまいます。が、彼女達の恨みや絶望が「幽女」となって残っているのかとも思えます。今までの言耶シリーズのようなその土地の風習や伝説が謎に絡んでくるわけではないので、ちょっと物足りない気もしました。しかし、言耶が最後に解き明かした謎もまた遊郭ならではの悲しさがありました。ちょっと気になったのはあの少々性格が歪んでいる紅千鳥さんが、遊女達の企みに賛同したのかということ。彼女なら言い出した人に対して口止め料くらい要求しそうですが……。

幽女の如き怨むもの (ミステリー・リーグ)

幽女の如き怨むもの (ミステリー・リーグ)

  • 作者: 三津田 信三
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2012/04/17
  • メディア: 単行本



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

2012-05-202012-06-02 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。