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2014-05-25 [長野まゆみ]

 長野まゆみさんの「団地で暮らそう!」を読みました。
 ー限りなく平成に近い昭和生まれの安彦君は、多摩川べりに建つ昭和の建物「森中団地」へと引っ越した。お隣に住む80歳の是清さんというお婆さんに団地暮らしのノウハウを教えてもらう日々。間取りから掃除当番まで、安彦君の知らない世界を紹介するー
 これは小説なのだろうか。本の帯には「著者初の団地小説」とある。安彦君を筆頭に登場人物も団地も架空のものなので、小説といえば小説なのだろう。しかし、書かれているのは団地暮らしのノウハウを集めたガイドブックのようなものだ。せっかく安彦君の家族のことも書いたのなら、団地暮らしを始めた安彦君のドタバタぶりを物語にして欲しかった。長野さんの作品ならば、きっと是清さんとは反対側の隣の部屋には優しいお兄さんがいるのかもしれないが。
 平成になって最早マンモス団地で暮らすというのは、若い人にとっては外国で暮らすのと同じなのかもしれない。浴槽を自前で用意しなければいけないとか、間取りの小ささなど私も初めて知ることが多かった。かつては最先端の暮らしとして注目された団地も、今では住人の高齢化が目立つ寂しい建物になってしまった。だが、公営団地はこれからこの国ではきっと必要とされるだろう。
 団地暮らしのノウハウ本ではあるが、著者はどうやら住宅供給公社やURがあまり好きではないようである。2社に対する批判が多くて、こちらとしては興醒めだ。やはり安彦君の団地での日々を読んでみたかった。

団地で暮らそう!

団地で暮らそう!

  • 作者: 長野 まゆみ
  • 出版社/メーカー: 毎日新聞社
  • 発売日: 2014/03/15
  • メディア: 単行本



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2014-01-01 [長野まゆみ]

 長野まゆみさんの「ささみみささめ」を読みました。
 ー「ささみみささめ」は、親族だけに通用する隠語でこれから内緒話をするという合図だ。耳元で囁かれて了承したら同じ言葉を囁き返す。祖父が臨終間際に父に残した言葉は「毒を飲んでやった」というもの。最早食事はおろか水も飲めない祖父に何があったのか。祖父の葬儀で明らかになったこととは……ー
 日常的に、道を歩いていたときにすれ違い様に、ふと耳に入って来るような言葉。その言葉をモチーフに綴ったショートショート集。25の物語が収録されています。「45°」も不思議なタイトルと味わいの短編集でしたが、「ささみみささめ」はまた一風変わった雰囲気の作品です。帯にあるようにまさに「白昼夢」という言葉がふさわしいでしょう。ミステリ風なもの、ちょっと背筋が凍りそうになるもの、ほのぼのとした気持ちになれるものとバラエティに富んでいます。共通しているのは登場する女性達の意地悪さと怖さ。長野さんの女性性に対する嫌悪感のようなものは健在です。同性愛的なお話も収録されているので、苦手な方はご注意を。ふだんと違う道を歩いていて不思議な体験をする「ウチに来る?」がお気にいりです。私は長野さんの作品では初期のものの方が好きなのですが、雰囲気がちょっと「夏期休暇」などに似ているかな?あの頃のような独特な世界を生きる少年達の物語が読みたいのですが、もう叶わないのでしょうか。

ささみみささめ (単行本)

ささみみささめ (単行本)

  • 作者: 長野 まゆみ
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2013/10/10
  • メディア: 単行本



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2013-05-25 [長野まゆみ]

 長野まゆみさんの「45°」を読みました。
 ーファストフード店で後ろの席から聞こえた奇妙な会話。30年前、とあるビルの3階から転落し、記憶を失ったというその人物は、自分が何故ビルから転落したのかを調べているらしい。その人物が呼び出した相手は、転落したビルの正面に建つビルの屋上でアドバルーンの監視や上げ下げを行う浮揚員のバイトをしていた男だった。アドバルーンは強風で45°の傾きになったら下げる決まりであり、アドバルーンが上がっている限り必ず1人の浮揚員がついているのだ。転落した人物は、自分が転落した瞬間を目撃したのではないかと縋るように尋ねている。そして、浮揚員をしていたという彼が語った真相とは(45°)ー
 表題作の「45°」をはじめ、収録された短編のタイトルが「/Y」とか「P.」とか「●」など、ちょっと不思議なものばかり。タイトル同様中身も不思議なお話です。長野風ミステリ短編集といったところでしょうか。表題作の「45°」は、アドバルーンが絡んだお話。アドバルーンが上がっている場所には必ず浮揚員というアルバイトがいるというのは知りませんでした。傾きが45°になったら下ろすというのも知りませんでした。最近、アドバルーン自体見なくなりましたし。この本に収録されているのは、ファストフード店や電車の中、雑踏ですれ違った人達から聞こえて来た何気ない会話が実は……というパターンです。ちょっと野次馬根性丸出しのおばちゃんみたいですが、確かに断片的に聞こえて来る他人の会話というのは、こちらの妄想をかきたてるものがあります。長野さんの最近の作風である「性倒錯」や、性別の曖昧さ、女同士の僻や妬みなどが絡み合って一癖も二癖もある作品が揃っています。時々ドキドキするような夢を私も見ることがあるので、「W.C.」は面白かったです。個人的には長野まゆみといえばカタカナ文字を漢字で書き、日本的なのに西洋の香りもするような少年達の物語の方が好きです。この人が成人した男女を書くとどうも生々しい。ご本人が健康志向なのは理解できますが、作中にまであまりカロリー蘊蓄を持ち込んでほしくないなあ。昔のような曹達水と甘い砂糖菓子のお話が読みたいです。和菓子でも良いですけど。

45°

45°

  • 作者: 長野 まゆみ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/03/29
  • メディア: 単行本



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2012-07-21 [長野まゆみ]

 長野まゆみさんの「チマチマ記」を読みました。
 ーマドモアゼル・ロコと空港ではぐれてしまった猫の兄弟。松寿司のおじいちゃんに拾われ、おじいちゃんの娘の宝来小巻のところで飼われることとなった。チマキとノリマキという新しい名前と共に新しい生活が始まった。新しい家には小巻と亡くなったご主人(ドードーさん)との間に出来た息子の鏡、ドードーさんの前妻であるマダム日奈子と孫である小学生の曜(ひかり)、曜の母親のカホルの弟のトホルが一緒に暮らすという複雑だけど仲良しな大家族だ。小巻がフリーペーパーに連載している「コマコマ記」に倣って、チマキも「チマチマ記」を書き始める。猫の目から見た宝来家の穏やかな日々ー
 我が家にも仔猫が来たので、チマキとノリマキの行動に「ああ、わかるわかる」と頷いてしまいました。我が家の猫達は歳が離れているし血は繋がっていないけれど、年上の猫はこまめにおチビの面倒をみているので、チマキのお兄ちゃんぶりが微笑ましいです。しかし、これは長野まゆみさんの小説ですから、人間達はなかなかのくせ者揃いです。ドードーさんの前妻と後妻が同じ家に暮らし、曜の両親は事実婚で仕事に飛び回っている為に彼女の面倒を見ているのは小巻。就職に失敗し、宝来家の賄いという仕事をすることになった鏡、曜の叔父で鏡の先輩であるトホル。トホルは天然のタラシ系で鏡を翻弄し、鏡はそんなトホルの言動に振り回されています。鏡とトホルの関係がいかにも長野まゆみ。あからさまな表現はないので苦手な人でも大丈夫かなとは思いますが……。この小説の目玉は鏡が作る料理だと思うのですが、残念ながらあまり美味しそうじゃない。カロリーコントロールを重視しすぎ。あまりにそこばかり拘るので、「ああ、すいませんねえ。私は身体に悪いものばかり食べてますよ」という気分になります。池波正太郎の小説のような「読んだら空腹感に苛まれる」ということがまったくありませんでした。小学生の曜にはこういう料理を食べさせるより、もっと万遍なく食べさせた方が良いんじゃないかなあ。ブロッコリーと豆乳ばかりじゃないか!チマキ達が食べているものも、猫にこれを食べさせてもいいのだろうかと思ってしまいました。猫がいるから料理には一切ネギを使わない!と主張するより、猫専用のものを与えて人間の料理を猫に応用しない方が良いと思う。料理蘊蓄を抜いて、猫と宝来家の日々だけだったらもっと面白かったかな。

チマチマ記

チマチマ記

  • 作者: 長野 まゆみ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/06/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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2012-07-08 [長野まゆみ]

 長野まゆみさんの「デカルコマニア」を読みました。
 ー21世紀。新型インフルエンザに感染した少年・シリルは、幼い弟への感染を防ぐ為に伯父の家へと移される。暇つぶしにと担任から届けられた宿題「タイムカプセルに入れる原稿への応募」の為に、図書室で自分の一族の家系図を作ることにしたシリルは、『デカルコマニア』という名の1冊の本を見つける。中世の技法で作られた本の書き手はシリルと同じ14歳のソラという人物だったが、書かれていたのは23世紀の話だった。シリルの一族の長であるD卿は2196年生まれであり、2013年現在67歳になっていたのだー
 簡単に言ってしまえば、「デカルコ」というタイムマシンに乗って時間を行き来する話でした。しかし、実にややこしい。普通「タイムマシン」が出て来るお話では、過去に干渉すれば未来が変わってしまうという掟があって、例えば結婚前辺りの自分の両親にあってはいけないとか色々と制限がありますが、本書の登場人物達はそんなこといっさいお構い無しで干渉しまくりです。中心にいるのはD卿ことドラモンテ一族ですが、彼等だけに伝わるちょっと奇妙なルールのチェスとレモンドーナツを目印にして、いとも簡単に時間を飛び越えてしまいます。「この人はきっとあの人だ」とじっくり考えながら読んだ方が良い。できればシリルのように家系図を書いた方がすっきりと頭の中に入って来る気がしました。不思議な港町の絵や鳥占い、マシュマロデイと呼ばれるお祭りの描写など長野さんらしいアイテムが溢れていました。そういえば、この鳥占いと同じように歯車を噛み合わせてぐるぐると模様を描くおもちゃがあって、小さい頃に遊んでいた覚えがあります。

デカルコマニア

デカルコマニア

  • 作者: 長野 まゆみ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/05
  • メディア: 単行本



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2011-08-08 [長野まゆみ]

 今週の「銀魂」はどうしたんでしょう。殆ど下書き状態だなんて。最初はわざとこういう絵にしたのかと思いましたが(下書きの割には書き込んでるので)。空知さん、体調不良なんだろうか。それともネーム作りに時間がかかり過ぎちゃったのか。ちょっと心配です。

 長野まゆみさんの「咲くや、この花〜左近の桜」を読みました。
 ー隠れ宿「左近」の長男・桜蔵(さくら)のもとに黒ずくめの男が現れ、「クロツラを駆除いたします」という怪しげな売り込みのチラシを置いて行った。そして「左近」の離れに引っ越して来た借家人の骸が押し入れから転がり出る。そこに再び現われた黒ずくめの男は、クロツラに奪われた魂を奪い返せば骸は息を引き返すと言うが……ー
 「左近の桜」の続編です。死者達は成仏する為に桜蔵と交わりたがるという、怪しい雰囲気の小説ですが、まあBLに近いものがあるので苦手な方は読まない方がよろしいかと。「左近」という宿がそもそも男性同士の逢い引きの場です。長野さんの描く日本家屋の情景はいつも素晴らしく、こういう家に住める登場人物達が心底羨ましい。たとえすぐ側に雨樋があって凄まじい雨の音が聞こえるという「時雨の間」であってもいいなあと思います(私は雨の音が結構好きだ)。桜蔵は自分の身体がどういうふうに扱われているのか薄々気付いているだろうに(最中は意識がないので)、ほいほいと怪しい人や場所に近付いてしまうのは如何なものか。しかも前作より危険度がかなりアップしているし。アヤカシを引きつけるところはちょっと「HOLiC」の四月一日みたい。しかも今作から久生という百目鬼ポジションのような級友まで出て来ました。この作品で最も謎なのは桜蔵の父親である柾でしょう。桜蔵の弟である千菊(ちあき)とは実の親子ですが、桜蔵とは血が繋がっていないらしい。しかし桜蔵も千菊も庶子であり、柾の正妻の遠子も桜蔵達の母親の葉子(はこ)の関係も謎です。柾の桜蔵と千菊に対する態度の違いも、ちょっと桜蔵が気の毒になってきますが、桜蔵の危機にはちゃんと助けにくるのだから大事には思っているのでしょう、たぶん。もしかして桜蔵の魂は「桜生」なんじゃないかと思っていますが……。桜蔵は柾から鍵を受け取ってしまい、彼と正妻が暮らす家に移ることになりますが、果たして柾がどう出るのか続編がありそうで期待しています。

咲くや、この花  左近の桜

咲くや、この花 左近の桜

  • 作者: 長野 まゆみ
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2009/03/27
  • メディア: 単行本



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2011-06-28 [長野まゆみ]

 サッカー女子W杯が開幕しました。初戦なので緊張したのか、ちょっとぎくしゃくしていたようですが、白星発進おめでとうございます。初戦に勝てると大きいので良かったです。10日前に頭部を怪我していた熊谷選手、身体をはったDFでハラハラしました。7月に浦和からドイツへ移籍してしまう熊谷選手にとっては、ドイツの皆さんに良い挨拶代わりになったかも。女子もどんどん海外に行ってしまうので寂しいなあ。

 長野まゆみさんの「野川」を読みました。
 ー両親の離婚と父親の事業の失敗によって転校を余儀なくされた音和。新しく通う事になった学校は野川のすぐそばにあり、そこには変わり者の教師・河井がいた。河井は現実の目ではなく想像の目で物を見ることを音和達に語って聞かせる。その河井に誘われて新聞部に入った音和は、彼等が育てる伝書鳩と『コマメ』という名の飛べない鳩に出会うー
 まず驚いたのが帯に書かれた「青少年読書感想文全国コンクール課題図書・高等学校の部」という文字。長野作品で読書感想文なんてすさまじい高さのハードルです。事実、この本を読んで「読書感想文」は書けないなと思いました。主人公の音和は両親の離婚によって父親と暮らすことを選びます。しかしその理由はいつもおしゃれで颯爽としていた父がすべてを失い、もしかしたら自ら命を絶ってしまうかもしれない。その父を一番最初に見つけるのが自分かもしれないという思い、父親がこの状況から這い上がるのかそれとも屈してしまうのかを見届けたいという誘惑にすぎません。しかし、音和が想像するよりずっと父親はたくましく柔軟な人でした。音和は今までとは全く違う関係を父親と築きはじめます。そして音和に「想像力という目」を教えた河井。いつもの長野作品であれば音和はもっと捻くれていただろうし、河井も音和に対して辛辣な態度をとったでしょう。この作品ではさすがにそんな描写はなく、河井は音和の出した「新聞部の部長になる代わりに、音和が望んだ時に話を聞かせる」という無茶な条件をあっさり呑み込みます。やがて音和は伝書鳩の目を通して野川の風景を見たいと望みはじめます。野川は府中や三鷹を流れる川で、様々な公園や遊歩道が整備されています。私は野川そのものを訪れたことはありませんが、ここは作中の音和のように想像力の目で野川を見ている気分になりました。『コマメ』の成長と音和の成長が重なって清々しい読後感を味わえます。しかし、音和の葛藤や伝書鳩を育てる風変わりな新聞部、部長の吉岡と音和の関係など盛りだくさん過ぎてちょっと中途半端です。余談ですが、この本で長野作品に興味を持った人が他の作品を読んでひっくり返らないか心配です。タイトルが可愛いからなんて「猫道楽」なんぞ読んじゃいけませんよ。

野川

野川

  • 作者: 長野 まゆみ
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2010/07/14
  • メディア: 単行本



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2010-06-10 [長野まゆみ]

 しっかり録画しつつNHKの「クローズアップ現代」をじっくりと見ました。今日のテーマは「はやぶさの帰還」です。あと3日ですよ。改めて日本の技術力の高さに感動しました。「はやぶさ」君に使われている技術は7年前のものですから。今後イオンエンジンは色々なところで使えるんじゃないかな〜。宇宙ヨット「イカロス」も順調で、帆を開くのが楽しみです。

 長野まゆみさんの「カルトローレ」を読みました。
 どこまでもきび色の沙(すな)が広がる砂漠地帯タッシル。『船』から降りたタフィは政庁の救済委員会による教育プログラムを終え、製本組合から奨学金を受けながらこの地に暮らすことを許された。彼に与えられた仕事は『船』から運び出された109冊に及ぶ日記の解読だ。しかし、日記はすべてのページが糊付され、まるでパイ生地のように膨らんでいる。砂漠で生活するのに最も大切な物資である「水」は、水脈探しに長けている「ワタ」と呼ばれる民族が一手に引き受けていた。タフィは「ワタ」の少年とタフィと同じ『船』の出身である役人のコリドーと親しくなる。ー
 実に説明しにくい作品であります。『船』は数百年以上前に地球を離れた人々であり、彼等は地球との接触を持たずに生活し、地球人に比べて遥かに長寿です。しかし、『船』の航行が不可能な状態に陥り遭難したところを地球人に発見されて、彼等は地球での生活を始めることになります。政府が行う教育プログラムというのが、一種の思想教育のような雰囲気を漂わせています。教育プログラムを受けると『船』で過ごした記憶を失うあたりが特に。タフィも『船』での出来事はおぼろげにしか覚えていません。タフィとワタとコリドーのグループに様々な人々が関わってきます。記憶を全く失っている偽者の検疫官や独自の文化を持って谷で暮らしている民族等。ワタは呪術的な模様を手足に描き込んでいるのが特徴で、タフィはそういう図案を一度見ただけで覚えてしまう能力を持っています。その能力と『船』の秘密が絡んできますが、結局は何も明かされることなく物語は終わってしまいます。タフィがこれからどんな生き方をするのか続きが読んでみたい物語です。

カルトローレ

カルトローレ

  • 作者: 長野 まゆみ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/04
  • メディア: 単行本



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2010-06-03 [長野まゆみ]

 人数が減って仕事の量が一気に増えて、さすがに月末はぐったりしました。よく働いたな〜と自画自賛できます。しかし!「はやぶさ」君はもっと必死に地球に戻ろうとしております。ついにオーストラリアへの軌道誘導となるTCM-3が始まりました。同時にオーストラリア政府の許可もおりて、「はやぶさ」君が送り出すカプセルの回収スタッフも現地入り。砂漠の真ん中でカプセルを探します。いよいよです。はっきりいってW杯より「はやぶさ」君の方が心配です。

 長野まゆみさんの「あめふらし」を読みました。
 兄と2人で暮らす大学生の市村は、「ウヅマキ商會」という胡散臭い事務所でバイトを始める。仕事内容は雨漏りの修繕から犬の散歩まであらゆることを引き受ける何でも屋だ。いい加減な社長の橘河と生真面目な番頭の仲村がいる。市村は橘河から「蛇を捕まえに行く」と告げられ山奥へと向かう。しかし、そこで待っていたのは既にこの世をさった女と市村との婚礼だったー
 長野さんの既刊「よろづ春夏冬中(あきないちゅう)」に収録されている「雨師」という短編を、もっと掘り下げて長編小説にしたものです。橘河の正体は「あめふらし」で、魂を捕まえることができる存在です。市村は増水した川に転落してすでに死んでいますが、橘川が彼の魂を捕まえている為に市村は自分が死んだとは思っていません。市村は時空を超えて様々な魂と出会います。番頭の仲村は他人の身体に己の魂を宿してしまう「やどかり」。橘河が愛した人に乗り移ってしまった為に、橘河の傍にいます。市村兄弟が暮らす祖父から譲られた古家が良い。古い建物が大好きな私にはとても羨ましい環境だ。雨や水にまつわる言葉が多い為に、小説全体が湿っているような感じがします。しとしとと霧雨が降っている中にいるような感じです。

あめふらし

あめふらし

  • 作者: 長野 まゆみ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/06
  • メディア: 単行本



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2010-05-27 [長野まゆみ]

 5月も終わりだというのに朝が寒いです。「はやぶさ」君は100時間のイオンエンジン噴射を無事に終え、地球外縁部への誘導が完了しました。地球まで740万キロ。地球に戻る確率が上がって参りました。6月13日までドキドキしてます。

 長野まゆみさんの「メルカトル」を読みました。
 ー孤児で救済院育ちのリュス・カルヴァートは、大学進学の学費を稼ぐ為に港町ミロナに建つ地図収集館で働き始める。生い立ちに引け目を抱くリュスはなるべく目立たないよう暮らしていたが、何故か様々な人々が彼に接触してくる。ある日、彼はメルカトルと署名のある手紙を受け取る。地図に描かれた好きな場所に暮らして良いという奇妙な文章にリュスは困惑するが、彼が暮らすアパートを地図収集館によくやって来る女が訪れる。有名女優と同じ名前を持つ彼女は、メルカトル氏からこの場所に住んでも良いという手紙を受け取ったと言うが……ー
 「メルカトル」というタイトル通り、地図が小説の重要な小道具になっています。イタリアあたりを思わせる架空の街が舞台。暫く日本を舞台にした小説を読んでいたのでちょっと新鮮です。長野さんはヨーロッパ風の架空都市を描くのがとても上手くて、この小説の舞台もありそうで絶対にない世界です。リュスが働く地図収集館が良い。是非とも一度行ってみたい。救済院育ちという生い立ちの為、できるだけ人と関わらないで生きて行こうとしているのに、収集館を訪れる常連さんやらドラッグストアのお姉ちゃんやら、公園でコーヒーを売る老婦人やら名門私立学校の制服を着た生意気な少年がちょっかいを出してきます。リュスはただただ翻弄されるばかり。長野さんの小説の主人公はこういうやたら受け身の男性が多い。彼等がどうしてリュスに関わるのかという謎が解けた時、物語が一気に収束していく部分が素晴らしかったです。

メルカトル

メルカトル

  • 作者: 長野 まゆみ
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2007/04
  • メディア: 単行本



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